筆者は、春の時期だけで年間100匹以上のメバルを釣っている。 そのほとんどが1〜2時間程度の短時間釣行、そして10回程度の釣行によるものだ。 この結果は、自然条件を読む力、そして現場での柔軟なアジャストに支えられている。

本記事では、その釣果の裏付けとなる「タイミング」の読み方について詳しく掘り下げていく。

メバル釣りは「場所とタイミング次第」だと僕は考えている。どれだけ実績のあるポイントでも、タイミングを外せばノーバイトは当たり前。逆に、どれだけタイミングが良くても場所選びを誤れば釣果は上がらない。逆に言えば、条件さえ合えば小場所でも爆発的に釣れるのがメバルという魚だ。

このVol.5では、筆者が春メバル釣行で重視している3つの自然要素──潮、月齢、風──について、どのように判断し、どのように動いているかを紹介する。

潮:動いていなければ始まらない

潮が動いていない時、メバルは沈黙する。 僕は基本的に潮止まり前後30分を避けることを基準にしており(この時間に入って準備して待っている感じ)、下げはじめあたりから止まる時間にかけてが最も期待しているタイミングだ。

すると面白いことに、潮の流れとともに、みるみるうちに魚の活性が上がってくることが解るため、こうしたタイミングはなにかとテンションが上がる。

中でも僕が通うポイントでは、上げ潮ではいまいち反応が鈍く、下げ潮の方が圧倒的に調子が良い。 潮位が下がっていくことでベイトが流され、それを食いにメバルの活性が一気に上がる傾向があるため、下げ潮のタイミングに釣行を合わせることが多い。

特に「潮が走り始めた直後」は、水中のベイトも活性が上がり、それに合わせてメバルも浮きやすくなる。 潮位そのものよりも「流れの変化」を重視するのがポイントのようにも思う。

月:暗ければ釣れるわけでもない

満月=釣れない、というのはおおよそ間違いではないと感じる。 僕は月の光と潮の動きのバランスを見ており、月が出ていても潮が効いていれば十分釣れると考えているが、満月が釣りにくい要素を持っているのも事実だ。

満月の夜は水面が明るくなり、魚の警戒心が強まる傾向がある。特にシャローや常夜灯のあるエリアでは、光の重なりによってメバルがなかなか浮いてこないことも多い。 その一方で、満月によって潮の干満差が大きくなるタイミングでは、流れが効きやすくなることもあり、必ずしも“釣れない夜”とは言い切れない。

特に「月夜+無風+潮止まり」のような条件では魚の警戒心が極端に高くなるため、そういうときは無理をせず早めに場所を移す判断もする。 むしろ、月が明るい夜には“光の境目”や“影の落ちる構造物”を意識した立ち位置の選択が、釣果を分けるポイントになる。

風:吹かなければ吹かないほど良い──だが完全には無視できない

風は春メバル釣りにおいて非常に厄介な要素でありながら、時に強烈なトリガーにもなる。 風速1〜3mの横風または追い風は釣りやすいという意見もあるが、僕にとっては必ずしもそうとは限らない。

風があることで水面が揺れ、ベイトの動きに変化が生まれ、メバルの警戒心が緩むという理屈は理解している。 しかし実際のところ、「風がなければ釣りやすく、風があれば釣りにくい」という印象が根強く残っているのが正直なところだ。 キャスト精度の低下、ライン操作の難しさ、アタリの取りづらさ……風が強いだけで、集中力を削がれてしまう。

それでもなお、風の中で釣れるという確信があるからこそ、僕は風を完全には避けない。 だが、ここで大事なのは優先順位だ。

僕にとっては風よりも“潮の動き”を重視している。 潮が走り、水中に流れの変化が生まれない限り、風があっても魚が浮かない、そんな場面を数えきれないほど見てきた。 風の効果が出るのはあくまで“潮が効いている”という前提があるときだと考えている。

だからこそ、風を読むことは大切だが、それは潮を読むことの“補助線”でしかない。 筆者の春メバルにおける自然条件の優先順位は、あくまで潮>風である。

雨:悪条件ではなく“アジャスト要素”

雨が降ると釣れない——という印象を持つ人も多いが、僕は必ずしもそうとは思わない。 小雨や雨上がりのタイミングは、むしろ好条件となることがある。

雨によって水面がざわつくことで魚の警戒心が和らぎ、活性が上がるケースも多い。 また濁りが入ることでベイトの動きが変化し、それを狙ってメバルが浮いてくることもある。

さらに重要なのは、雨の“温度”だ。特に春の温い雨は僕の経験上、爆釣の期待値が高い。 水温が一時的に上がることで、メバルのコンディションが一気に変わることがあり、表層に浮いた魚が積極的に口を使ってくるシーンも多く見てきた。 寒冷前線を伴わない穏やかな雨の日は、あえて狙って出かける価値があるとすら思っている。

なにより釣り人が少ない。これが最大の利点かもしれない。

ただし、大雨による急激な濁りや水温変化は逆効果になりやすく、釣り場の地形や流れによっては一気に魚が散ってしまうこともある。

僕は雨が降ったら即中止ではなく、“その雨が魚にとってどう働くか”を見極めて行動を選ぶ。 濡れることよりも、アジャストする判断力の方が大事なのだ。

まとめ|タイミングとは“自然との接続点”

釣れるかどうかは、結局「その瞬間にメバルがそこに居て、かつ喰う気があるか」に尽きる。 だから僕は、道具やテクニック以上に自然の変化を見つめることに力を入れている。天気を見て「今日は釣れない天気だな…」と、釣りに出かけない日はざらにある。(自然相手なので釣れるかもしれませんが!)

潮が動き、風が揺らぎ、月が照らし、雨が静かに水面を叩く。 そのひとつひとつの変化に敏感になることで、メバルの気配は一気に近づいてくる。

大事なのは“自然の側に自分を寄せる”ことだ。自然を操作することはできないが、自然に呼応することはできる。 釣りは情報収集でも攻略でもなく、接続だ。自分の存在を自然に溶け込ませ、同じリズムで動けたとき、メバルとの遭遇率は格段に上がる。