僕の父は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)で亡くなった。もう13年になるだろうか…
ゆっくりと手足が動かなくなり、言葉が話しづらくなり、やがて呼吸ができなくなっていく。 そんな進行性の神経変性疾患に、僕はほとんど何もできなかった。
当時は、ALSという病気の正体さえ知らず、治療法があるのかも、どう支えたらいいかも分からなかった。 父から自分はこういう病気だと告げられた時のあの底のない不安は今も忘れられない。
でも、あれから時間が経った今、僕は別の視点からあらためてこの病を見つめ直している。 それが「精密栄養学(Precision Nutrition)」という新しい健康アプローチだ。
ALSとは何か?
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、脳と脊髄にある運動ニューロン(運動神経細胞)が徐々に死んでいく進行性の神経変性疾患だ。
この病気は、手足の筋力低下から始まり、やがて言語障害、嚥下障害、呼吸筋の麻痺へと進行していく。 知能や感覚は比較的保たれることが多く、本人の意識があるまま、身体だけが動かなくなっていく。
現在、ALSの根治療法は存在せず、リルゾールやエダラボンなど一部の薬剤が進行抑制に使われているが、治癒には至らない。
発症の原因としては、以下のような複数の要因が重なっていると考えられている:
- グルタミン酸による興奮毒性
- TDP-43やFUSなどのタンパク質の異常凝集
- ミトコンドリア機能の低下
- 酸化ストレスの増大
- 慢性炎症および免疫反応の異常
- 家族性の場合はSOD1やC9orf72などの遺伝子変異
こうした要因が複雑に絡み合い、運動ニューロンがダメージを受け、最終的にアポトーシス(プログラムされた細胞死)に至ると考えられている。
病気は”見えない蓄積”である
ALSのような神経変性疾患は、「ある日突然発症したように見える」けれど、 実際には10年、20年とかけて体の中で静かに準備が進んでいたものかもしれない。
- 抗酸化システムの弱化
- ミトコンドリア機能の低下
- 慢性的な炎症状態
- 有害金属や毒素の蓄積
- 必須栄養素の長期的な不足
近年の研究では、ALS患者の脳脊髄液中におけるグルタミン酸の過剰や、TDP-43というタンパク質の異常蓄積、 ミトコンドリアDNAの損傷、細胞内の酸化ストレス指標の上昇などが報告されており、 病気の背景にある”見えない代謝的な脆弱性”が、確実に存在していることが分かってきている。
精密栄養学が教えてくれるもの
ALSのような神経疾患を含め、慢性病や原因不明の不調には共通点がある。
- 病気が進むまで「見えない」
- 気づいたときには「もう手遅れ感」がある
- でも、その前に“兆候”は必ずあった
精密栄養学では、この“兆候”を数値として見える化することができる。
見えないもの | 精密栄養学での可視化手段 |
---|---|
ミトコンドリアの元気さ | 乳酸/ピルビン酸比、CoQ10レベル、ATP代謝指標 |
酸化ストレス | 8-OHdG、MDA、SOD活性、グルタチオン比 |
解毒能力 | 肝機能+フェーズ1/2解毒酵素、メチレーション状態 |
神経の栄養状態 | ビタミンB群、ホモシステイン、セリン・グリシン・タウリン濃度 |
炎症 | hs-CRP、フェリチン、サイトカイン(IL-6, TNF-αなど) |
腸内環境 | 腸内フローラ解析、有機酸プロファイル、ゾヌリンなど |
これらは、単に「食事に気をつけよう」というレベルを超えて、 「身体のどこで何が足りないのか」「どこに負担がかかっているのか」を具体的に教えてくれる。
精密栄養学とは、血液、尿、唾液、遺伝子などの詳細なデータを通じて、 その人の内面の栄養状態や代謝の異常を「見える化」する健康アプローチだ。
父に何が起きていたのか?
今になって思う。 父は口数が少なく、食事にも無頓着だった。仕事のストレスも多く、睡眠は浅かったと思う。タバコを吸い、 運動もしない、代謝は明らかに落ちていたと思う。
もしも、その時に酸化ストレスのマーカーや、ミトコンドリアの機能を定量化できていたら、 神経細胞のサポートに必要な栄養素を早期に補っていたら。 そして“蓄積された負荷”を見える化できていたら……
今になってそんなことを思うが、時代とテクノロジーが追いついていなかった時にそれを考えるのは不毛だ。
AIと向き合う時代のリテラシー
僕はこの文章の多くを、AIとともに書いている。 ALSの病態、栄養の可視化、代謝の話──これらの情報の整理や記述には、AIのサポートが欠かせなかった。
だが今もなお、AIに対する偏見や誤解は根強く残っている。
- AIは感情がないから信用できない
- 人間の直感の方が優れている
- 情報が正しいとは限らないから使えない
確かにAIは感情を持たない。 しかしそれゆえに、疲れず、偏らず、膨大な文献にアクセスし、 僕たちの問いに対して何度でも真摯に応答してくれる存在だ。
AIを道具として使いこなすリテラシーは、 医療や健康、教育、そして人生の選択においても、今後ますます重要になっていく。
そしてAIとの関わりは、僕たちの「意識」との関係にも影響してくる。
顕在意識が「言語化された問い」や「日々の判断」であるとすれば、 潜在意識は「違和感」や「なぜか引っかかる感覚」として現れる。 AIはその顕在意識に応じて情報を提供してくれるが、 真に活かすためには、僕たちが自分の潜在意識に耳を傾ける力も必要になる。
見えない違和感を言葉に変える──そのプロセスがあってこそ、 AIと精密栄養学の“可視化”の力は、最大限に活かされる。
AIはすべてを解決してくれる魔法ではない。 けれど、「考えるきっかけ」をくれる非常に優れた伴走者だ。
精密栄養学と同じように、AIもまた見えなかったものを見えるようにする力を持っている。 このふたつの力を合わせることで、僕たちは、より深く、より正確に、命と向き合えるようになるはずだ。
未来の誰かのために
父に対して「何もできなかった」という後悔は、今も僕の中に残っている。 けれど、だからこそ──精密栄養学という新しい知の道具を手にした今、 僕はその悔しさを、未来の誰かに役立つかもしれない希望へと変えたい。
精密栄養学は、単なる情報ではなく、 “まだ発症していない誰か”の体の声を、見えるかたちで拾い上げるための道具だ。
病気が始まるその前に。 「なぜかおかしい」と感じた小さなサインを、数字として確認できたなら。
それは、ほんのわずかなタイミングの違いで、未来を変えることができるかもしれない。
僕にとっての健康とは、失われた命を悼む気持ちから生まれる行動であり、 その静かな記憶が、他の誰かの人生に光をともす道になることを信じている。
僕は本記事で述べてきたような経験と学びをもとに、現在、40代以降の方々を対象としたパーソナルヘルスケアサービス「ミトフローからはじめる、40代の健康戦略」の提供をはじめた。
本サービスでは、エネルギー代謝の中心を担うミトコンドリアの機能を高めることにより、 40代以降に現れやすい原因不明の不調を根本から見直し、 健康的な身体づくりへの第一歩を踏み出すことを基盤としている。
▶ 詳細は公式サイトへ:https://mitoflow40.studio.site/
「ミトコンドリアの健全な働きが、人生の質そのものを左右する」との考えのもと、 本サービスは一人ひとりの身体の声に丁寧に耳を傾けることを信条としている。
もし興味を持ったら是非コンタクトしていただきたい。
これを読んだあなたが、たとえ小さな違和感でも「何かおかしいな」と思った時、 それを大切にしてくれることを、心から願っている。
Comments by daisuke kobayashi
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