過去の出来事、技術、思想を未来の視点から再解釈するために書き残すブログメディア Hyperpast Journal(ハイパーパストジャーナル)。書き手は映像クリエイターのDAISUKE KOBAYASHIです。
「ヘルスラーニングジャーナル」とは?

ヘルスラーニングジャーナルとは、40代の僕が学んだ最新の健康・栄養に関する知識を整理し、記事化して発信していくシリーズです。
従来の栄養学から分子栄養学、そして精密栄養学へと進化している現在の流れを深掘りしながら進めています。
なぜ「ヘルスラーニングジャーナル」を書くのか?
健康に関する最新の研究は日々進化をしており、特に「精密栄養学」は個々の遺伝情報や腸内環境に基づいた新たな健康管理の鍵となっています。僕自身が最前線で学び、実践し記事にまとめることで、ウイルス対策やブレインフォグ、倦怠感など、従来の医療では解決しにくい症状の改善、要は「名もなき病」の対策・改善につなげたいと考えているのです。
みなさんもぜひ学び、実践し、より健康的で生産性のある未来を僕と一緒に目指しましょう!
はじめに
20世紀初頭、アメリカ南部の農村地帯で深刻な健康問題が発生していました。その病の名は「ペラグラ」。特徴的な症状には、皮膚炎(特に日光が当たる部位に赤くただれたような皮膚症状が出る)、下痢、そして記憶障害や幻覚などの認知機能障害が含まれます。医学の発展していない時代には、この病の原因すらはっきりしていませんでした。
やがて、アメリカの医師ジョセフ・ゴールドバーガーが、食生活と病気の関連性に着目し、ペラグラは感染症ではなく、栄養欠乏に由来する疾患であることを突き止めました。特に、ナイアシン(ビタミンB3)の欠乏がこの病気の直接的な原因であることが証明されたのです。彼は刑務所や孤児院での食事を変えることでペラグラの発症を抑制し、栄養の重要性を社会に示しました。
このような歴史は、単なるビタミンの話ではなく、「栄養」と「健康」の関係を社会的・構造的に考える必要性を私たちに教えてくれます。
ナイアシンとは何か?
ナイアシンは、ビタミンB群の一種で「ビタミンB3」とも呼ばれます。水に溶けやすい性質(水溶性ビタミン)を持ち、体内に蓄積されにくいため、毎日の摂取が必要とされるビタミンです。
生理学的には、ナイアシンは「補酵素」の前駆体としての役割を果たします。特に重要なのが、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とNADP+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)という化合物。これらは体内で数百種類以上の酵素と関わり、代謝やエネルギー生成、DNA修復、抗酸化防御、免疫調節など多岐にわたる生体機能に関与しています。
ナイアシンの2つの化学形態
ニコチン酸(nicotinic acid)
- 主に医療用途で使用され、コレステロール値の改善(LDL低下、HDL上昇)に効果があるとされます。
- ただし、高用量摂取により「ナイアシンフラッシュ」と呼ばれる副作用が起こることがあります。
ニコチンアミド(niacinamide)
- ナイアシンフラッシュを引き起こしません。
- 皮膚炎の改善、関節炎の補助、皮膚のバリア機能向上、シワの改善、ニキビの抑制など、スキンケア分野で多用される。
- NAD+の生成には有効だが、NADP+経路への影響は少ないとする報告もあります。
ナイアシンの生化学的な役割
ナイアシンは、炭水化物、脂質、タンパク質といった三大栄養素をエネルギーに変換する工程において重要な働きを担います。
解糖系・TCA回路・電子伝達系の橋渡し役
ナイアシン由来のNAD+は、ミトコンドリア内で行われるTCA回路(クエン酸回路)と電子伝達系において、水素イオンと電子を運搬する「電子キャリア」のような役割を果たします。これにより、最終的にATP(アデノシン三リン酸)が効率よく生成されます。
SIRT遺伝子群(サーチュイン)の活性化
NAD+は、老化抑制遺伝子とも言われるサーチュインの活性にも必要不可欠であり、細胞の長寿・修復・炎症制御に関与しています。
抗酸化とDNA修復
NADP+は、抗酸化酵素であるグルタチオンリダクターゼやチオレドキシンの活性化に不可欠な存在です。
- グルタチオンの再生促進 活性酸素から細胞を守るための重要な防衛機構のひとつである「グルタチオン還元系」は、NADPHの供給によって維持されます。
- PARP酵素とDNA修復 DNAが損傷を受けたとき、NAD+はPARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)という修復酵素のエネルギー源となり、遺伝情報の安定性維持に貢献します。
ナイアシンを含む代表的な食品とトリプトファン経路
ナイアシンは、トリプトファンという必須アミノ酸からも合成されますが、その変換効率は60:1(トリプトファン60mg → ナイアシン1mg)と低いため、食事からの摂取が基本となります。
ナイアシン豊富な食材例:
- 鶏むね肉(特に皮なし)
- カツオ、マグロ、サバ、イワシなどの青魚
- レバー(豚・鶏・牛)
- ピーナッツ、玄米、全粒小麦パン
- マッシュルーム、椎茸などのきのこ類
ナイアシンフラッシュとは?
ナイアシンフラッシュは、ニコチン酸を高用量摂取した際に起こる一過性の反応です。
- 原因物質: プロスタグランジンD2の生成による血管拡張作用
- 症状: 顔や首、上半身の皮膚が赤くなり、ピリピリ・かゆみ・ほてり感を伴う
- 持続時間: 通常15〜30分程度で自然消退
- リスクではなく生理的反応: 実害はほとんどなく、ナイアシンの強力な血流促進作用が視覚的に現れたものと理解されます
フラッシュ軽減のための工夫
- 持続放出型ナイアシン(SRタイプ):徐放性のため、急激な血中濃度上昇を避けられる
- ニコチンアミドへの切り替え:フラッシュを起こさず、NAD+増加には十分有効
- 食後摂取の推奨:空腹時は吸収が早く、フラッシュが強くなる傾向があるため、食事とともに摂取するのがベター
- 少量からのスタートと漸増:体を慣らすことで反応を最小限に
ナイアシンの過剰摂取と注意点
厚生労働省が示す耐容上限量(1日当たり)では、成人男性で30〜35mg程度を基準としていますが、医療目的では1g以上を投与するケースもあります。
- 高用量での副作用例:
- 肝機能障害(AST/ALTの上昇)
- 血糖値の上昇
- 尿酸値の上昇と痛風のリスク
- 胃腸障害や不眠などの中枢神経症状
自己判断で高用量を続けるのは危険であり、必ず医師や栄養士の指導を受けることが大切です。
おわりに
ナイアシンは、単なる「ビタミン」の枠にとどまらず、エネルギー代謝・抗酸化・遺伝子修復・免疫調整といった幅広い役割を担っています。
現代のストレス社会や高糖質・高脂質な食生活が広がるなかで、ナイアシンの恩恵を意識的に活用することは、身体の根本的なリズムを整える大きな一歩になるでしょう。
目的に応じた形態の選択(ニコチン酸/ニコチンアミド)、摂取量の調整、そして食事からの摂取を基盤に、健康な日々を支える“ナイアシン習慣”をぜひ始めてみてください。
#23ではビタミンEについて書いてきたいと思います!
️ ️ヘルスラーニングジャーナル記事はこちらにまとめています。 ️ ️

Comments by daisuke kobayashi
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