過去の出来事、技術、思想を未来の視点から再解釈するために書き残すブログメディア Hyperpast Journal(ハイパーパストジャーナル)。書き手は映像クリエイターのDAISUKE KOBAYASHIです。

「アウトドアと日常の境目」をテーマに服を選ぶようになってから、僕は何かとクアンダリー・ジョガーズに手が伸びるようになった。

それは、見た目が街に馴染み、機能は山のそれを持っているから。

実際、このパンツを購入してからというもの、あれほど愛用していたテルボンヌ・ジョガーズよりも、履く頻度はこちらの方が明らかに高くなっている。少し肌寒い日、街での打ち合わせ、移動の多い日──気がつくと、これを手に取っている。

まさに「街と山のあいだ」に生きる者のための一本──それがパタゴニアのクアンダリー・ジョガーズだ。

しなやかで、すっきり見える

まずシルエットがいい。テーパードの効いたラインは細身に見えつつ、膝や股の可動域は広く、屈伸や座り作業もストレスがない。立ったりしゃがんだりを繰り返す撮影現場や、釣行中の岩場の上でも、動きに引っかかりがない。

さらにウエストから裾にかけてのラインが自然で、腰回りももたつかず、かといってピタピタでもない。そのちょうどいいバランスが、上に何を合わせても形を崩さずに収めてくれる。

仕事終わりにそのまま低山に登れそうな服──という表現がぴったりで、出先でふと寄り道したくなるような抜け道感のある一着。

裾はゴム入りのジョガータイプ。足元はサンダルでもスニーカーでも合わせやすく、ローカットのシューズと組み合わせたときの収まりも良い。街中でもまったく浮かず、カジュアルな装いの中に、ほんの少しの”整った印象”を添えてくれる。

適度な厚み、安心感、そして実用性のある素材

生地は、テルボンヌほど軽やかではないが、そのぶん耐久性と安心感が段違いにある。

しっかりとしたハリ感がありながらも、柔らかさも兼ね備えていて、履き心地には安定感がある。朝露の残る草むらを歩いても、岩場に腰を下ろしても、あるいは泥が跳ねるようなシーンでも、気を使わずにガシガシ使える。少々ラフに扱ってもへこたれず、どこでも行けるパンツだという実感がある。

さらに、撥水性も優れており、小雨や濡れたベンチ、湿った地面でも気にせず使える。水を弾き、汚れも付きにくいので、普段着としての快適さとアウトドア的な耐候性をうまく両立している。

春先や天気が不安定な日にちょうどよく、風の冷たさを緩やかに遮ってくれる。暑すぎず寒すぎず、肌寒さと蒸れ感のちょうど中間にあるような、絶妙な着心地。季節のゆらぎのなかで、最も頼りになる素材感だ。

また、意外と見落とされがちだが、このパンツの速乾性も非常に優れている。汗をかいたり、ちょっと濡れてしまってもあっという間に乾くので、朝から晩まで着っぱなしでも快適さが持続する。

さらに、モバイル性(携帯性)も非常に高い。軽くて畳むとかなりコンパクトになるので、バックパックに一枚忍ばせておくだけで天候や気温の変化に対応できる。街でも山でももう一本の安心として持ち歩ける便利さがある。

静かに便利なポケット構成

サイドポケットに加えて、右腿にファスナー付きのポケットがある。

鍵やカード、小さなモバイルバッテリーなど、落としたくないものをしっかり収納できる。普段着として過ごしていても、実はフィールド仕様というギア的安心感がある。

ちょうどいい曖昧さ

アウトドアなのか、街着なのか──クアンダリー・ジョガーズは、そうした境界線をあえてぼかしてくれるパンツだ。

風を防ぎ、街に馴染み、雨を弾き、気温の上下にも柔軟に対応する。アウトドアの機能性と街着の佇まい、そのどちらにも完全には振り切らず、ちょうどよく両方を備えている。

しかも、派手さや目立つ主張はなく、静かに、だが確実に生活を支えてくれる存在。旅先でも、撮影現場でも、街中のカフェでも、風景に自然と溶け込む。

行き先を決めずに出かけたくなるような、そんな1日を後押ししてくれる一本。クアンダリー・ジョガーズは、どこでも通用するではなく、どこにでも馴染むという感覚がしっくりくる。