過去の出来事、技術、思想を未来の視点から再解釈するために書き残すブログメディア Hyperpast Journal(ハイパーパストジャーナル)。書き手は映像クリエイターのDAISUKE KOBAYASHIです。

「ヘルスラーニングジャーナル」とは?

ヘルスラーニングジャーナルとは、40代の僕が学んだ最新の健康・栄養に関する知識を整理し、記事化して発信していくシリーズです。

従来の栄養学から分子栄養学、そして精密栄養学へと進化している現在の流れを深掘りしながら進めています。

なぜ「ヘルスラーニングジャーナル」を書くのか?

健康に関する最新の研究は日々進化をしており、特に「精密栄養学」は個々の遺伝情報や腸内環境に基づいた新たな健康管理の鍵となっています。僕自身が最前線で学び、実践し記事にまとめることで、ウイルス対策やブレインフォグ、倦怠感など、従来の医療では解決しにくい症状の改善、要は「名もなき病」の対策・改善につなげたいと考えているのです。

みなさんもぜひ学び、実践し、より健康的で生産性のある未来を僕と一緒に目指しましょう!

はじめに

胃酸は僕たちの消化システムにおいて極めて重要な役割を担う消化液であり、僕たちが食べたものを身体が利用可能な形に変換するプロセスの起点となります。主に胃の壁細胞(壁細胞またはパリエタル細胞)から分泌される塩酸(HCl)を中心とするこの液体は、強い酸性(pH1.5〜3.5)を保つことで、複数の重要な消化機能を支えています。

第一に、胃酸は摂取された食物に含まれる病原菌や寄生虫などの微生物を殺菌し、感染リスクを低減します。これにより、腸内環境が過剰に汚染されるのを防ぐ「防御壁」としての役割を果たしています。

第二に、胃酸は消化酵素ペプシンの前駆体であるペプシノーゲンを活性化してペプシンに変換し、タンパク質をより小さなペプチドに分解する工程を促進します。これはタンパク質の消化過程において非常に重要なステップであり、以降の小腸での吸収効率に大きく影響します。

さらに、胃酸はミネラル(鉄、亜鉛、マグネシウム、カルシウムなど)のイオン化を促し、体内での吸収を可能にします。特に鉄は、胃酸によって三価鉄から二価鉄へと変換され、小腸上部でより効率よく取り込まれます。

加えて、ビタミンB12の吸収にも不可欠であり、胃酸によって食品中のB12がタンパク質から遊離されることで、胃から分泌される内因子(インストリンシックファクター)と結合し、小腸末端での吸収が可能となります。

このように、胃酸は単に「酸性の液体」ではなく、体内の栄養吸収と防御機構に密接に関わる、消化の司令塔とも言える存在です。

胃酸の主な役割

  • タンパク質の分解:ペプシンという消化酵素を活性化し、タンパク質をアミノ酸へと分解。
  • ミネラルの吸収支援:鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウムなどをイオン化し、吸収可能な形に変化。
  • ビタミンB12の吸収補助:胃酸によりB12がタンパク質から分離し、内因子と結合することで吸収可能に。
  • 病原体の殺菌作用:食事に含まれる細菌やウイルスの侵入を防止。

胃酸不足がもたらす影響

胃酸が不足すると、以下のようなさまざまな健康上の問題が発生する可能性があります。

  • タンパク質の未消化による腸内腐敗:胃酸が不足するとペプシンの活性が弱まり、タンパク質が十分に分解されないまま腸へ送られます。この未消化タンパク質が腸内で腐敗し、悪玉菌の増殖や有害なガスの発生、さらには腸内環境の悪化を引き起こす可能性があります。
  • 栄養素(特にミネラルやビタミンB群)の吸収障害:胃酸の役割の一つは、鉄や亜鉛、カルシウム、マグネシウムといったミネラルをイオン化し、吸収しやすい形にすることです。また、ビタミンB12は胃酸によって食品中のタンパク質から分離され、内因子と結合することで吸収可能になります。これらのプロセスが阻害されることで、栄養素の慢性的な欠乏が起きやすくなります。
  • 慢性的な疲労感や集中力の低下、貧血傾向:特にビタミンB12や鉄が不足すると、赤血球の形成が不十分になり、酸素の運搬能力が低下します。その結果、疲れやすくなったり、思考が鈍くなったりするほか、貧血や頭痛、息切れなどの症状も現れることがあります。
  • 胃もたれや膨満感、ゲップの増加:胃酸が少ないことで食べ物の消化が遅れ、胃に長くとどまるため、胃の中で発酵やガス発生が起こりやすくなります。その結果として、胃もたれや膨満感、ゲップの頻発といった不快な症状が日常的に発生するようになります。

胃酸不足をチェックする方法

  1. 重曹テスト(自宅)
    • 空腹時に重曹を水に溶かして飲み、5分以内にげっぷが出なければ低胃酸の可能性。
  2. 血液検査
    • 平均赤血球容積(MCV):92以上だとB12や葉酸の吸収不良のサイン。
    • ペプシノーゲン検査
      • PG1:40以下は低胃酸の可能性
      • PG1/PG2比:5.0以下で胃萎縮やピロリ菌感染の可能性

ピロリ菌と胃酸の関係

ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、胃の粘膜に長期間感染することで炎症を引き起こし、胃の健康に多大な影響を及ぼします。感染初期には慢性胃炎を引き起こし、時間の経過とともに胃の粘膜を萎縮させ、胃酸の分泌量を低下させる原因となります。その一方で、感染によって一時的に胃酸の過剰分泌が誘発され、胃潰瘍や十二指腸潰瘍につながるケースもあるため、ピロリ菌は“胃酸のバランス破壊者”とも言える存在です。

このような胃酸の分泌異常が続くと、栄養の吸収不良や慢性的な胃の不調につながる可能性があるため、ピロリ菌の感染有無を早期に知ることが極めて重要です。その際に役立つのがペプシノーゲン検査であり、この検査では胃の粘膜から分泌されるペプシノーゲン1型と2型の数値と比率を確認することで、胃粘膜の萎縮の有無やピロリ菌感染の可能性を評価できます。

具体的には、ペプシノーゲン1型が40ng/mL以下、またはペプシノーゲン1型と2型の比率(PG1/PG2)が5.0未満の場合、胃粘膜の萎縮が進行していることが疑われ、過去または現在のピロリ菌感染が示唆されます。したがって、ペプシノーゲン検査は、ピロリ菌の存在だけでなく、胃酸の分泌状態と胃粘膜の構造的変化の把握にも役立つ非常に有用なスクリーニングツールとなります。

胃酸を促す栄養と食材

栄養素:

  • ナイアシン(ビタミンB3):副腎の機能を支え、消化酵素や胃酸の分泌に関与。エネルギー代謝を助けながら、胃の活動を内側からサポートします。
  • ビタミンB1:糖質代謝に不可欠な栄養素であり、神経伝達や胃の神経制御にも関係。消化管の運動や分泌機能を整える働きがあります。
  • 亜鉛:細胞分裂や粘膜修復に必須で、胃酸を分泌する壁細胞の機能を維持。亜鉛が不足すると、胃酸の産生そのものが低下しやすくなります。

食材:

  • レモン・梅干し・パセリ・生姜・大根おろし・漬物:これらはすべて、唾液や胃液などの消化液を刺激し、食事のはじめに摂ることで胃酸の自然な分泌を促します。特に大根おろしにはジアスターゼという消化酵素が豊富で、消化機能全体をサポートします。
  • ボーンブロススープ:牛骨や鶏ガラを長時間煮込んで作るスープで、コラーゲンやアミノ酸、ミネラルが豊富に含まれています。消化器系の修復や炎症の抑制、胃腸の負担軽減に非常に有効です。

食習慣とストレス管理も大切

  • よく噛んで食べる:食事をしっかり咀嚼することで唾液と連動した消化酵素が分泌され、胃に送られる刺激によって胃酸の自然な分泌も促されます。咀嚼は消化の第一段階であり、これが十分でないと胃への負担が増し、胃酸分泌も抑制されやすくなります。
  • 食前に消化を促す食材を少量摂取:梅干しやレモン水、パセリ、生姜、大根おろしなどを食事前に取り入れることで、消化液全体の分泌を活性化します。これにより、胃酸が自然と分泌されやすくなり、食べ物の分解がスムーズに進みます。特にレモン水は空腹時に一杯飲むことで胃の準備運動を促す働きがあるとされます。
  • ストレス軽減:ストレスが交感神経を優位にしすぎると、胃の働きや胃酸分泌が著しく低下します。これを防ぐためには、自律神経のバランスを保つことが不可欠です。瞑想や深呼吸は副交感神経を活性化し、リラックス状態へと導くことで胃酸の分泌を正常化させる作用があります。ウォーキングなどの有酸素運動も心身を整え、胃腸全体の働きを底上げします。

胃酸の役割を見直そう

胃酸は単なる消化液ではなく、栄養吸収、免疫、消化全般にわたる広範な機能を担う“健康の鍵”です。重曹テストや血液検査を通じて、まずは自身の胃酸状態を把握することが大切です。

その上で、適切な栄養素や食材を取り入れ、生活習慣を整えることで、胃酸の分泌を健全に保ち、内側からの健康をサポートしましょう。

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