過去の出来事、技術、思想を未来の視点から再解釈するために書き残すブログメディア Hyperpast Journal(ハイパーパストジャーナル)。書き手は映像クリエイターのDAISUKE KOBAYASHIです。

「ヘルスラーニングジャーナル」とは?

ヘルスラーニングジャーナルとは、40代の僕が学んだ最新の健康・栄養に関する知識を整理し、記事化して発信していくシリーズです。

従来の栄養学から分子栄養学、そして精密栄養学へと進化している現在の流れを深掘りしながら進めています。

なぜ「ヘルスラーニングジャーナル」を書くのか?

健康に関する最新の研究は日々進化をしており、特に「精密栄養学」は個々の遺伝情報や腸内環境に基づいた新たな健康管理の鍵となっています。僕自身が最前線で学び、実践し記事にまとめることで、ウイルス対策やブレインフォグ、倦怠感など、従来の医療では解決しにくい症状の改善、要は「名もなき病」の対策・改善につなげたいと考えているのです。

みなさんもぜひ学び、実践し、より健康的で生産性のある未来を僕と一緒に目指しましょう!

はじめに

僕たちの体内には、驚くほど多くの細菌が共生しています。特に腸内には約100兆から1000兆個もの細菌が存在しており、その数は人間の細胞数の30倍以上にものぼります。これらの腸内細菌は単なる共生生物ではなく、体内で複雑な生態系を構成し、私たちの健康、免疫、さらには心の状態にまで深く関わっています。

腸内細菌は大きく分けて、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3つに分類されます。善玉菌は僕たちの体に有益な作用をもたらす菌群で、代表的なのが「乳酸菌」と「ビフィズス菌」です。これらは腸内細菌の約20〜30%を占め、腸内の環境維持に不可欠です。

一方、悪玉菌は体に悪影響を与える可能性のある菌で、大腸菌やブドウ球菌などがその代表です。通常は全体の10〜20%にとどまりますが、増殖すると腸内で腐敗産物を作り出し、健康を損なう要因となります。

残る約50〜70%は日和見菌と呼ばれ、善玉菌と悪玉菌のバランスによって働きが変わります。つまり、腸内細菌の“バランス”こそが、健康の鍵を握っているのです。

乳酸菌とビフィズス菌の違いと役割

乳酸菌とビフィズス菌は同じ善玉菌に分類されますが、その生息場所、酸素への耐性、生成する代謝物、そして腸内での働きには明確な違いがあります。

● 乳酸菌:小腸を中心に広範囲で活躍

乳酸菌は通性嫌気性の性質を持ち、小腸から大腸まで幅広く生息しています。口腔や胃でも活性を持ち、食事と共に体内に取り込まれやすいのが特徴です。乳酸菌は主に「乳酸」を生成し、腸内を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を防ぎます。また、乳酸によって小腸の粘膜を刺激し、粘膜免疫の働きを強化する効果も持っています。

小腸には全身免疫機能の70%以上が集中しており、乳酸菌はここで病原菌の侵入を防ぎ、アレルギーの緩和、感染症予防、自己免疫のバランス調整といった働きをサポートしています。

● ビフィズス菌:大腸に特化し、強力な酢酸で守る

一方、ビフィズス菌は偏性嫌気性菌であり、酸素を嫌うため小腸では生息せず、大腸に特化して棲息しています。ビフィズス菌が生成する代謝物の中でも、特に注目すべきは「酢酸」です。酢酸は乳酸よりもはるかに強力な抗菌作用を持ち、大腸の悪玉菌を抑制し、炎症や感染を防ぐ働きがあります。

さらに、酢酸は大腸のバリア機能を高め、腸壁からの異物の侵入を防ぐ役割を果たしており、リーキーガット症候群の予防にも貢献します。

両者がもたらす健康効果の違いと共通点

乳酸菌は、私たちの体に対して実に多岐にわたる有益な働きを持っています。小腸を中心に活動する乳酸菌は、腸管免疫の要となるパイエル板を刺激することで、免疫細胞の活性化を促進し、全身の免疫力を高めます。これにより、風邪やインフルエンザなどの感染症予防に貢献するほか、アレルギー症状の軽減、自己免疫のバランス調整といった効果も期待されています。

さらに、乳酸菌が生成する乳酸は、腸内を酸性に保つことで悪玉菌の繁殖を抑制し、善玉菌が住みやすい環境を整えます。その結果、腸内環境の改善に伴い、血中コレステロールや中性脂肪の低下、高血圧の予防、大腸がんリスクの軽減、さらには虫歯や歯周病の予防といった口腔内への波及効果までも報告されています。

一方で、大腸に特化して活躍するビフィズス菌は、便秘や下痢といった排便トラブルの改善に優れた力を発揮します。ビフィズス菌は酢酸をはじめとした短鎖脂肪酸を多く生成し、大腸のpHを下げて病原菌の定着を防ぎつつ、腸のバリア機能を強化します。この働きは、腸からの有害物質の漏出を防ぐことで、炎症性疾患のリスクを下げることにもつながります。

また、ビフィズス菌はビタミンB群の合成にも関与しており、特に葉酸やビオチンなどはエネルギー代謝や皮膚の健康、妊娠期の胎児の発育にも関係する重要な栄養素です。さらに、免疫調整作用によってアレルギー症状を緩和し、がん予防への寄与も報告されています。

このように、乳酸菌とビフィズス菌は、それぞれが異なる腸内環境に適応しながら、個別かつ補完的な役割を果たしています。まさに“腸内のダブルエンジン”として、協調的に私たちの体の恒常性維持に貢献しているのです。

効果的に摂取するには?

乳酸菌は、以下のような伝統的な発酵食品に豊富に含まれています。

  • ヨーグルト
  • キムチ
  • 味噌
  • チーズ
  • 糠漬け

これらの食品では、乳酸菌が発酵の過程で増殖し、食材の保存性と風味を高めるだけでなく、摂取時には生きた状態で腸内に届くこともあります。特にヨーグルトは世界中で広く親しまれ、含有される菌株によっては整腸作用や免疫調節作用が科学的に実証されているものもあります。

一方、ビフィズス菌は酸素に弱く、腸内に生きたまま到達しにくいため、その定着は課題とされてきました。これに対応するため、特定の機能性ヨーグルトや乳酸菌飲料では、胃酸に耐えて大腸まで届くよう工夫された「プロバイオティクス処方」が導入されています。

また、ビフィズス菌の腸内での定着と増殖を促進するためには、プレバイオティクス(善玉菌のエサとなる成分)を併用することが効果的です。

代表的なプレバイオティクス食品には次のようなものがあります:

  • バナナ
  • ごぼう
  • アスパラガス
  • 玉ねぎ
  • 玄米
  • 大麦

これらは食物繊維やオリゴ糖を豊富に含んでおり、特にフラクトオリゴ糖やガラクトオリゴ糖は、ビフィズス菌の増殖を強く促進することで知られています。

さらに、発酵食品(プロバイオティクス)とプレバイオティクスを組み合わせて摂取する「シンバイオティクス」戦略が注目されています。これは、善玉菌を供給するだけでなく、その定着と増殖を支えることで腸内環境をより効果的に整える方法として、近年の栄養科学でも評価が高まっています。

腸内細菌との共生が健康の土台になる

乳酸菌とビフィズス菌は、それぞれが異なるフィールドで機能しながらも、総合的には互いを補い合い、腸内の健全な生態系の構築に寄与しています。

腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど重要な器官であり、腸内細菌との共生関係が崩れることで、免疫力の低下、栄養吸収の不調、さらにはメンタル面への影響まで広がります。

発酵食品やサプリメントを通じて、これらの菌を日常生活に取り入れることは、私たちの健康にとって有益な選択肢です。

日々の食生活を見直し、乳酸菌とビフィズス菌という“腸の守護者たち”を味方に付けることで、身体の内側から健やかな状態を育んでいきましょう。

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